内見のときは、間取りと日当たりと家賃のことで頭がいっぱいでした。契約も済ませ、引っ越しの日取りも決めて、さあネットを申し込もうという段になって「この建物は工事ができません」と言われる。あるいは管理会社から「壁に穴を開ける工事は許可できません」と返ってくる。住む部屋は決まっているのに、通信だけが宙に浮いたままになります。
困るのは、断られた理由がその場では分からないことです。提供エリアの外なのか、建物の都合なのか、所有者の判断なのかで、残る手も、かかるお金もまったく変わります。この記事では、断られる理由を三つに切り分け、申し込む前に確かめることを三つに絞り、そのうえで費用を「はじめに出るお金・毎月のお金・やめるときのお金」の三段に分けて数えます。金額そのものより、どこにお金が立つのかという形をつかむほうが、判断は速くなります。

「工事ができない」には、別々の理由が三つある
申し込みの窓口では、どの理由でも「できません」の一言で返ってくることがあります。けれど中身は三通りあり、代わりに残る手段も、かかるお金も別ものです。
一つ目は、建物にまだ設備が来ていない
集合住宅では、まず建物の共用部まで回線が引き込まれ、そこから各住戸へ分けられます。建物そのものに設備が来ていなければ、部屋の中だけ工事をしても使えません。地図の上では提供エリアに入っていても、建物の単位では未導入ということが起こります。これは入居者の希望では動きにくい部分で、所有者が建物全体として導入を決めない限り変わりません。
二つ目は、所有者や管理会社の許可が下りない
設備は来ているのに、壁に穴を開ける、配管に新しい線を通す、共用部に機器を置くといった作業に許可が出ないことがあります。退去のときの原状回復や、ほかの住戸への影響を避けたいという理由が多く、建物の年数や管理の方針で判断が分かれます。「前の入居者はできたらしい」が通らないのは、方針が途中で変わっていることがあるためです。
三つ目は、部屋までの経路がふさがっている
許可はあっても、部屋まで線を通す道がないことがあります。既存の配管がいっぱいで新しい線を入れられない、床下や天井裏に通せない、電話の線しか来ていない、といった物理的な事情です。この場合は「できない」というより「その部屋だけ条件が悪い」に近く、別の方式なら通ることもあります。
一つ目と三つ目は建物の都合で、入居者の側からはほとんど動かせません。二つ目だけは、聞き方と相談のしかたで結論が変わることがあります。
申し込む前に、確かめることは三つだけ

断られてから手を打ち始めると、荷ほどきの日に通信だけが無い、という状態になりがちです。先に次の三つを押さえておくと、どの手段が残るのかが早い段階で見えます。
一つ目は、管理会社に「導入実績」と「配線の方式」を聞くこと。「ネットは使えますか」と聞くと「使えると思います」で終わってしまいます。「この建物に光回線の導入実績はありますか」「各住戸への配線の方式は何ですか」と聞くと、答えが具体的になり、二つ目の理由なのか一つ目の理由なのかも見分けがつきます。
二つ目は、部屋の壁にある差込口を見ておくこと。電話のモジュラージャックしかないのか、それらしい光の差込口があるのかで、できることが変わります。内見のときに一枚だけ写真を撮っておくと、問い合わせのやり取りが短くなります。
三つ目は、建物の名前まで入れて可否の判定を取ること。住所だけの提供エリア判定は、建物の単位の事情を含みません。建物名まで入れた判定を取り、できれば回線の事業者に電話で確かめておきます。ここまでで「引けない」と確定したら、残りは工事のいらない手段です。工事なしで今日から使える三つの比べ方は、今日からネットが要るとき、いちばん早いのはどれかで、使えるまでの時間と実費の二軸で並べています。
費用は「はじめ・毎月・やめるとき」の三段で数える

一段目は、はじめに出るお金です。契約のときの事務手数料、端末の代金または初期の費用、設定や配送にかかる実費がここに入ります。二段目は、毎月のお金。基本の料金と、使った量に応じた分、付けたオプションです。三段目は、やめるときのお金。契約の期間内に解約したときの費用、端末の分割払いが残っていればその残り、借りていた機器の返送料、設置したものを外す費用が立ちます。
| 手段 | はじめに出るお金 | 毎月のお金 | やめるときのお金 |
|---|---|---|---|
| 光回線(引けた場合) | 契約の手数料と工事の費用。工事の費用は分割になることが多い | 使っても使わなくても固定で立つ | 分割の残りと、設備を外す費用が出ることがある |
| ホームルーター | 契約の手数料と端末の代金。端末は分割のことが多い | 使っても使わなくても固定で立つ | 端末の残りと、借りていれば返送の手間 |
| 持ち運べる一台(チャージ式) | 端末の代金。月々の契約そのものを結ばない | 容量を足した月だけ。足さない月は立たない | 返却も解約の手続きもない |
実際にいくらになるかは、同じ手段でも事業者や時期で変わります。費目ごとに足して総額を出す手順は、モバイルWiFiの料金は月額だけで決まらないで分解しているので、見積もりを並べるときはそちらの数え方に合わせてください。
住む期間で割ると、答えが入れ替わる
三段のうち一段目と三段目は、住む期間が短いほど重くなります。月あたりに直すと、その重さが目に見えます。計算は一行です。はじめに出るお金を住む月数で割り、毎月のお金を足す。やめるときのお金が見込まれるなら、それも同じ月数で割って足します。
仮に、はじめに出るお金の合計を三万円、毎月のお金を四千円として置いてみます(この金額は計算の見本であって、実際の料金ではありません)。三年住むなら三万円は三十六か月に薄まるので、月あたりはおよそ四千八百円。一年なら六千五百円ほど、三か月なら一万四千円ほどになります。同じ契約でも、短く住む人にとってはまったく別の買い物です。
逆に、長く住むと決まっているなら一段目の重さは薄まり、毎月の差のほうが効いてきます。この判断を工事の費用と契約期間の残り方から比べたものが 一人暮らし・単身赴任で固定回線を「引かない」判断 です。寮や社宅、ウィークリーマンションのように、はじめから引けないと分かっている住まいでの選び分けは 寮・社宅・ウィークリーマンションのネットはどうする? にまとめています。
使わない月がある人は、三段目の形が変わる
ここまでの数え方は、毎月そのまま使い続けることを前提にしています。ところが工事のできない部屋に住む人には、在宅の日が少ない、実家や職場で過ごす時間が長い、数か月後にまた引っ越す予定がある、といった事情が重なっていることがよくあります。使わない月にも二段目が立ち続けるのは、三段のうちいちばん気づきにくい出費です。
使う月だけ容量を足し、使わない月は寝かせておく形なら、二段目が月ごとには立ちません。やめるときの手続きも返却もないので、三段目が最初から無い形になります。工事の可否や建物の事情に左右されないのも、この手段の性質です。もちろん、家族が同時に高い画質の動画を見るような使い方では固定回線のほうが向きますから、部屋の条件と暮らし方の両方から選び分けてください。通信の速さや容量の持ちは環境によって変わるため、ここに書いたことはいずれも目安として読んでいただければと思います。
使う月だけ使える、チャージ式のWiFi
工事の許可も、撤去の手続きも要りません。使う月だけ容量を足して、使わない月は寝かせておけます。
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