部屋探しのときに「インターネット無料」と書かれていたので、ここは何も用意しなくていいのだと思っていた。ところが住みはじめてみると、夕方からの動画が止まり、仕事のオンライン会議では自分の声だけが遅れて届く。管理会社に電話をしても「建物の設備なので個別には対応できません」と言われてしまう——賃貸でこの行き止まりに当たる人は、決して少なくありません。
この記事では、賃貸の「インターネット無料」が実は三つの形に分かれていること、そして足りないと感じたときの打ち手を①備え付けをそのまま使う ②自分で一本引く ③必要な月だけ一台足すの三つに整理して、「工事と許可」「出せる速さ」「やめやすさ」の三点で比べます。速さや容量の数字はすべて目安で、建物の設備や時間帯、使う台数によって変わる前提で読んでください。

「インターネット無料」は三つに分かれる|まず自分の部屋がどれかを確かめる
同じ「無料」「ネット付き」という言葉でも、建物側の作りは大きく三通りあります。どれに当たるかで、できることとできないことがはっきり変わります。
①建物に一本引いて全戸で分け合う形
建物の入口まで回線を一本引き込み、そこから各部屋へ配っている形です。入居者は申し込みも支払いもせずに使える代わりに、同じ一本を建物全体で分け合うので、在宅の人が多い時間帯は一戸あたりに回ってくる余力が小さくなります。各部屋への配り方が電話回線を使う古い方式のままだと、建物の入口までが速くても部屋の中で上限にぶつかることがあります。
②共用部のアクセスポイントに相乗りする形
共用部や各階に無線のアクセスポイントが置かれ、入居者はそこへつなぐ形です。機器が自分の部屋の中にないため、電波の届き方を自分で変えられません。部屋の奥や水まわりの向こうでは弱くなりやすく、置き場所を工夫するという手が最初から使えないのが弱点です。
③設備だけあり、契約は自分でする形
壁にLANの差込口や光の引込口はあるけれど、使うには自分で申し込みが必要な形です。この場合の「インターネット対応」は「工事をしなくても申し込みだけで始められる」という意味で、無料とは限りません。ここに当たる部屋なら、事業者を自分で選べる余地が残っています。

確かめ方は三つあります。(1)重要事項説明書や募集図面の「インターネット」欄の書き方を見る(「無料」「対応」「引込済」で意味が違います)。(2)部屋の中にLANの差込口があるか、あるとしてそれが生きているかを見る。(3)管理会社に「どの事業者のどんな回線か」「自分で別の回線を申し込んでよいか」を聞く。(3)の答えは、このあとの打ち手がそのまま決まる一番大事な情報です。
足りないと感じたとき、原因は「速さ」と「自由度」のどちらなのか
「ネットが足りない」という感覚は、分けて見ると二つの別の問題です。
ひとつは速さです。必要な速さは用途でかなり違い、文字と画像の調べものなら数Mbps、動画はきれいに見たいなら十数Mbps前後、オンライン会議は映像を出すなら数Mbps程度を上りと下りの両方で確保したい、というのが一般的な目安です。見落としやすいのは上りで、会議で自分の映像を送る、写真や資料を送る、といった場面は上りの細さがそのまま相手側の見え方に出ます。用途ごとの目安は動画も会議も止まらないのは何Mbpsからかで分解しています。
もうひとつは自由度です。建物の設備は、速さが足りなくても入居者の側から機器を替えたり事業者を乗り換えたりできません。混み合う時間に遅くなるのは速さの問題ですが、打ち手を自分で持てないことが本当の困りどころで、こちらは設備を直してもらうのを待つか、自分の回線をもう一つ用意するかの二択になります。どちらが効くのかを決めてから道具を選ぶと、遠回りになりません。
三つのやり方を「工事」「出せる速さ」「やめやすさ」で比べる
打ち手は大きく三つです。順番に見比べると、同じ人でも住む期間や働き方で答えが入れ替わります。
| 比べる点 | ①備え付けをそのまま使う | ②自分で一本引く | ③必要な月だけ一台足す |
|---|---|---|---|
| 工事と許可 | 不要。入居した日から使える | 原則必要。管理会社や所有者の許可、壁への配線が前提 | 不要。箱から出して電源を入れるだけ |
| 使えるまで | 即日 | 申込から工事まで数週間かかることがある | 届いた日から |
| 速さの考え方 | 建物の設備と時間帯に左右され、自分では変えられない | 自分の回線になるので安定しやすい。配線方式にも左右される | 電波の入り方に左右される。置き場所は自分で動かせる |
| 費用の考え方 | 家賃に含まれる。追加の負担はない | 月々の料金に加えて工事費と初期費用、契約期間の縛りが出ることがある | 使う月だけ容量を足す形なら、使わない月の負担を抑えやすい |
| やめやすさ | やめる概念がない(選べない) | 解約と撤去、原状回復の手間が残る | 必要がなくなればそこで足すのをやめられる |
| 向いている人 | 調べもの中心で、在宅の仕事が少ない人 | 数年住む予定で、毎日長時間つなぐ人 | 在宅が週に数日、繁忙期だけ増える人 |
②を選べるかどうかは、先ほどの「自分の部屋がどの形か」で決まります。壁に穴を開ける工事が要る場合、賃貸では許可が下りないことも珍しくありません。許可が出ない部屋での選び方は工事の許可が下りない部屋で、ネットはいくらで用意できるかに分解してあります。期間が短いなら、固定回線を引かないという判断も十分合理的です(固定回線を「引かない」判断)。社宅や寮、ウィークリーのように住まいの形から条件が決まる場合は寮・社宅・ウィークリーマンションのネットも参考になります。
ひと月にどれだけ要るのかを、先に数字にしておく
③を検討するときに迷うのが容量です。先に「ひと月でどれだけ外に出ていくのか」を出しておくと、必要以上に大きい契約を選ばずに済みます。あくまで目安ですが、使い方別だとこのくらいの幅になります。
- 調べもの・連絡が中心(検索、地図、やりとりの文字と画像)=ひと月3〜10GB程度
- 動画をよく見る(画質を落とさず毎日1〜2時間)=ひと月20〜50GB程度
- 在宅の仕事が入る(オンライン会議が毎日、資料のやりとりも多い)=ひと月50〜100GB程度
注意したいのは、備え付けを使っている人はふだん自分の使用量を測っていないことです。家賃に含まれていて請求が来ないので、感覚が分からないまま容量を選ぶことになります。そこで、まずは一か月のあいだスマートフォン側の使用量の表示を見ておき、そこへ在宅の仕事ぶん(会議1時間でおおよそ0.5〜1GB程度が目安)を足して見積もると、桁を外しにくくなります。在宅が週に二日だけ、繁忙期の月だけ増えるという使い方なら、年間でならして考えたほうが安くなることもあります(使う月と使わない月がある人の通信費を12か月で分解)。
決める前に、管理会社へ確認しておく四点

打ち手を選ぶ前に、次の四点を聞いておくと手戻りが出ません。入居前なら内見のとき、住んでいる途中なら電話やメールで一度まとめて聞くのが早いです。
- 部屋に来ている回線の形と事業者——全戸で分け合う形か、共用の無線か、自分で契約する形か。
- 自分で別の回線を申し込んでよいか——申し込めるか、工事を伴う場合に許可が出るか、費用はどちら持ちか。
- 共用設備が止まったときの窓口——管理会社なのか回線事業者なのか。復旧までのあいだ自分でつなぐ手段を持っておくかの判断材料になります。
- 退去時に戻す範囲——自分で引いた回線の撤去や壁の補修がどこまで必要か。
とくに三番目は見落としがちです。建物の設備が止まった場合、入居者の側には直す手段がなく、復旧を待つしかありません。仕事の予定が入っている日にそれが重なると、半日が丸ごと止まります。自分の手元に使える一台があるかどうかで、その日の損害が変わります。
「無料だから我慢する」以外の選び方がある
賃貸の「インターネット無料」は、調べものや連絡が中心の暮らしには十分なことが多く、追加の負担がないという意味でよい設備です。一方で、在宅の仕事が入る、家族が同時に使う、オンラインの授業や面談があるといった事情が加わると、建物の設備だけでは足りない日が出てきます。そのとき大事なのは、設備を責めることではなく「自分の側に打ち手を一つ持っておくこと」です。
工事ができない部屋でも、契約を長く縛られたくない人でも、必要な月だけ容量を足す形なら、備え付けを使いながら足りない月だけ補えます。まずは自分の部屋がどの形かを確かめ、ひと月の使用量を一度数字にしてみてください。それだけで、選ぶべき打ち手はかなり絞られます。
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在宅の仕事が増える月や繁忙期だけ容量を足して、使わない月は寝かせておけます。
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