副業でも個人事業でも、仕事を家でしていれば通信費はかかります。ところが確定申告の時期になると、その通信費だけ妙に手が止まる。理由ははっきりしていて、家の光回線は家族も使っているから、まるごと経費にはできないからです。そこで出てくるのが「按分(あんぶん)」という考え方で、事業に使った割合だけを計上します。
ただ、按分は毎年おなじ作業が発生します。割合を決め、根拠を残し、聞かれたら説明できるようにしておく。この記事では、按分の考え方を整理したうえで、家の回線はそのままにして仕事用の回線を一本だけ足すという併用の形が、何を減らしてくれるのかを見ていきます。税務の取り扱いは事業の実態や地域によって判断が分かれるため、最終的な判断は税理士や所轄の税務署にご確認ください。
家の回線を仕事に使うと、なぜ面倒が増えるのか
家庭用の光回線は、仕事にも私生活にも同じ一本が使われています。動画も、子どものゲームも、打ち合わせも、同じ請求書の中に混ざっている状態です。経費として計上できるのは事業に使った部分だけ、というのが基本の考え方なので、混ざっている以上はどこかで線を引く必要があります。
厄介なのは、線の引き方が一通りではないことです。使った時間で割る、使った部屋の面積で割る、回線を使う端末の台数で割る。どれを採っても「なぜその割合なのか」を自分で説明できる形にしておかなければなりません。しかも事業の形が変われば割合も変わるので、一度決めたら終わりにもなりません。

按分の代表的な考え方
よく使われるのは次の三つです。いずれも目安であり、どれが適切かは事業の実態によります。
- 時間で割る=一日のうち何時間を事業に使っているかで比率を出す。在宅で作業時間がはっきりしている人に向きます。
- 面積で割る=家のうち仕事場として使っている部屋の広さの比率を使う。家賃や電気代と同じ基準でそろえられます。
- 日数で割る=週に何日事業に使っているかで出す。副業で曜日が決まっている場合に説明しやすい形です。
どの方法でも、決めた比率と、その根拠になる記録(作業時間のメモ、間取り、稼働日)を残しておくことが求められます。計算そのものより、説明できる状態を維持する手間のほうが、毎年じわじわ効いてきます。

「分ける」と、何が変わるのか
ここで視点を変えます。按分がややこしいのは一本の回線が混ざっているからなので、仕事で使う通信だけを別の回線に載せてしまえば、その回線については按分の計算そのものが要らなくなります。家の光回線は家庭用としてそのまま、仕事の打ち合わせや納品はもう一本のほうで、という分け方です。
実務上のちがいは三つあります。第一に、根拠の説明が「この回線は事業専用です」の一行で済むこと。第二に、金額が毎月はっきり分かれるので、帳簿の入力が一行で終わること。第三に、家族が動画を見ている時間帯にオンライン会議が重なっても、お互いの帯域を取り合いにくくなることです。三つめは経理の話ではありませんが、実際に困るのはむしろここかもしれません。
もちろん、分ければ回線が一本増えるぶん支出は増えます。だから「按分の手間と、増える月額のどちらが軽いか」という比較になります。毎日フルタイムで在宅なら分ける価値が出やすく、月に数日だけなら按分のほうが安く済むこともあります。

分けたあと、帳簿はどう書くのか
事業専用にした回線は、通信費としてそのまま全額を入力します。摘要欄には「事業用回線」とだけ書いておけば、あとから見返したときに按分の計算を思い出す必要がありません。家の光回線のほうは、家事按分をやめて家計の支出として扱うか、従来どおり一部だけ按分するかを選ぶことになります。
年の途中で分け方を変えたときは、変えた月と理由を一行メモしておくと後が楽です。年度をまたいで見返したときに「なぜこの月から金額が変わったのか」が分からなくなるのが、いちばんよくある詰まりどころだと思います。帳簿は正しさだけでなく、来年の自分が読める形にしておくと続きます。
月によって仕事量が変わる人はどうするか
副業や季節性のある事業だと、忙しい月と暇な月の差が大きくなります。固定の回線をもう一本、年間の契約で持つと、使わない月も同じ金額が出ていきます。按分の手間は減っても、年間で見ると割高になりかねません。
こういう形のときに検討しやすいのが、使う月だけ容量をチャージして使うタイプです。仕事が立て込む月は多めに、動かない月は買わない。支出がそのまま稼働の記録に近づくので、「この月はこれだけ事業に使いました」という説明とも相性がよくなります。通信の速さや使える容量の感じ方は環境によって変わりますので、実際の使い勝手はご自身の作業内容と合わせてご確認ください。
向く人・向かない人
分けるほうが向きやすいのは、在宅の作業時間が長い人、オンライン会議が多い人、家族と同居していて使用状況の説明が面倒な人。逆に、仕事の通信がほとんどスマートフォンで完結している人や、月に数時間しか事業に使わない人は、按分のままで十分なことが多いと思います。
迷ったときは、いまの回線代に按分率をかけた金額と、回線を足したときの月額を並べて比べてみてください。差が数百円なら、手間のほうを基準に決めていいはずです。
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