工事が始まって現場にプレハブの事務所が建つと、机も電話もコピー機も数日でそろうのに、ネットだけが後回しになることがあります。日報の入力、施工写真のアップロード、クラウドに置いた図面の確認、元請けとのWeb会議。どれも通信が前提なのに、肝心の回線は「とりあえず監督のスマホで」のまま工期の半分が過ぎてしまう、という話は珍しくありません。やっかいなのは、この事務所がいつか必ず畳まれることです。住まいと違って、契約を長く続ける前提が成り立ちません。そこでこの記事では、工期のあいだだけ使う前提で、固定回線・スマホのテザリング・モバイルWiFiの三つを、使えるまでの日数/畳むときに残るもの/人数/現場の環境という同じ四つの軸で並べてみます。料金や工事の可否は立地と契約で変わるため、ここに書く数字は目安として読んでください。
最初に、現場事務所で通信を何に使っているかを書き出す
選ぶ前に決めておきたいのは「どれくらい要るのか」です。現場事務所でよくある用途を並べると、だいたい次のようになります。
日報や出面の入力、施工写真のアップロード、クラウド上の図面や施工計画書の閲覧、遠隔臨場やWeb会議、メールと見積のやりとり、勤怠の打刻。このうち量として重いのは、写真と会議の二つです。施工写真は1枚あたり数MBになることがあり、1日100枚をそのまま上げれば数百MB規模になります。Web会議も、画質にもよりますが1時間でおおむね数百MBから1GB程度を見ておくと、あとで足りなくなりにくくなります(いずれも環境により変わります)。
逆に、日報の入力やメールだけなら、必要な量はぐっと小さくなります。「事務所に誰が何人いて、写真と会議をどれくらいやるか」を一度書き出すと、このあとの比較がそのまま自分の現場の判断になります。

比べる軸① 使えるようになるまでの日数
固定回線を引く場合、申し込みから開通までは数週間から1か月以上かかることがあります。仮設の建物は電柱からの引き込みルートを新たに作ることが多く、土地の所有者や元請けの許可、配線の経路確認といった工程がそのぶん増えます。着工と同時に事務所を動かしたい現場では、間に合わない可能性を先に見ておく必要があります。
テザリングは、すでに持っているスマホでその日から使えます。モバイルWiFiは端末が手元に届けば当日から使えるため、到着までの日数がそのまま待ち時間になります。「今日から要る」場面での選び方は工事なしで使える3つを「使えるまでの時間」と「実費」で比べた記事にも書きました。現場事務所は、この「待てない」がとくに起きやすい場所です。
比べる軸② 工期が終わったあとに何が残るか
ここが、住まいの回線選びといちばん違うところです。
固定回線は、契約期間の途中で解約すると解約時の費用や工事費の分割残債が残ることがあります。加えて、仮設の建物を撤去するときには引き込んだ設備の撤去も必要になります。半年で終わる現場に2年単位の契約を結ぶと、使い終わったあとの支払いが後ろに伸びていきます。
テザリングは契約が増えないので、終わったあとには何も残りません。そのかわり、使っているあいだはスマホ側の容量と電池を削り続けます。モバイルWiFiは、レンタルなら返却、買い切りなら端末が手元に残ります。チャージ式のように使う月だけ支払う形なら、工事が止まっている月や中断期間の負担を小さくできます。買い切りと月額のどちらが向くかは、買い切り・月額契約・都度レンタルを「使わない月がある人」で比べた記事の考え方がそのまま使えます。固定回線を引かない判断そのものについては工事費と契約期間の残り方で比べた記事もあわせてどうぞ。
比べる軸③ 同時に何人が使うか
監督ひとりが日報とメールに使うだけなら、テザリングで足りてしまう現場もあります。判断が変わるのは人数が増えたときです。
朝礼のあとに数人がいっせいに写真を上げる、協力会社の担当者が来て図面を開く、夕方に事務所で会議に入る。こうした使い方が重なると、1台のスマホにぶら下げる形では動きが重くなりやすく、電池も一気に減ります。モバイルWiFiは同時に接続できる台数に上限があり、おおむね10台前後を目安にしている機種が多いものの、台数に余裕があっても全員が同時に重い通信をすれば体感は落ちます。人数が多い現場では、会議の時間だけ他の作業を避けるといった運用のほうが効くこともあります。

比べる軸④ 電源・置き場所・電波という現場側の条件
四つめは、カタログを見ても分からない部分です。
まず建物そのものが電波を弱めることがあります。ユニットハウスやコンテナ型の事務所は金属に囲まれているため、外では十分に入る場所でも室内では細くなることがあります。窓際に端末を置くだけで変わる場合があるので、設置してすぐに置き場所を決めてしまわないほうが無難です。
次に電源です。仮設の電源は、工事の都合で日中しか来ない現場や、夜間に落ちる現場があります。モバイルWiFiは内蔵の電池で動くぶん止まりにくい一方、充電のタイミングを決めておかないと夕方に切れます。外で使う機器の電池が先に切れる問題は外出先でWiFiだけ先に電池が切れる話にまとめています。
そして粉じんと温度。夏のプレハブ内は想像以上に温度が上がるので、直射日光の当たる窓際に機器を置きっぱなしにするのは避けたいところです。契約前に現地で電波を見ておく手順はつながらないときの確認順をまとめた記事が使えます。

工期の長さで分けると、迷いがひとつ減る
四つの軸を踏まえると、選び方は工期の長さでかなり整理できます。
三か月までの短い現場なら、固定回線は開通が間に合わないおそれが高く、畳むときの手間も残ります。テザリングか、持ち込んですぐ使えるモバイルWiFiが現実的です。人がひとりならテザリング、事務所として複数人が使うならモバイルWiFi、という分け方になります。
三か月から一年ほどの現場は、モバイルWiFiが中心になりやすい範囲です。写真と会議が多いなら容量に余裕のある形にし、中断や閑散期がある工事なら、使わない月に支払いが止まる形を選ぶと総額が動きます。
一年を超える大きな現場や、常時多人数がいる事務所では、固定回線を引く価値が出てきます。ただしこの場合も、契約期間の終わりが工期の終わりより後ろに来ないかと、撤去まで含めた費用を最初に確認しておくのが安全です。在宅や出張の予備回線として回線を二本持つ考え方はオンライン会議を止めないための予備回線の記事も参考になります。
契約を決める前に、現場で確かめておきたい三つ
最後に、申し込みボタンを押す前に済ませておくと後戻りが減る三つを挙げておきます。
ひとつめは着工前に現地で電波を見ておくこと。できれば時間帯を変えて二回、事務所を置く予定の位置で確かめます。ふたつめは工期の終わりの日付を先に決めてから契約期間を選ぶこと。順番が逆になると、終わったあとの支払いが残ります。三つめは使わない月があるかどうかを数えること。冬季中断や資材待ちで事務所が動かない月があるなら、その月に固定費が出ない形のほうが総額は小さくなります。
工期のあいだだけ通信が要る、終わったら止めたい。現場事務所の回線は、この二つを同時に満たせるかどうかで選ぶと迷いません。使う月にだけ容量を足す形なら、中断のある工事でも支払いが工期からはみ出しにくくなります。
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